大発生した大型クラゲは各地の定置網漁業に深刻な被害をもたらした。
ホクモウ漁業事業部
開発部 漁撈課  坂井 明
キャリア29年の建て込みのスペシャリスト。その経験と技術は誰も真似できない。
ホクモウ漁業事業部
開発部 漁撈課  越坂 和彦
門前事業所で鍛えられた漁場管理の達人。
日本沿岸に来襲した大型クラゲは、各地の定置網漁業に深刻な被害をもたらした。
平成14年秋、日本沿岸に“海の悪魔”が襲来した。大型クラゲ(エチゼンクラゲ)が大発生したのである。 大型クラゲはこれまで、ほぼ40周年周期で大発生していたが、今回は前回から10年も経っていなかった。
この段階では、漁業関係者は何の対策も講じることができなかった。 海中を漂う無数の大型クラゲに、ただ呆然とすることしかできなかったのである。 過去の例と照らし合わせて、どうせ来年は来ないだろうという楽観的な考えもあったのかもしれない。しかし、翌平成15年も大型クラゲは大発生した…。
大型クラゲは、各地の漁場に深刻な被害をもたらした。 クラゲを定置網外に排出する時、本来漁獲すべき魚も同時に逃げてしまった。 獲れた魚もクラゲの刺胞毒や圧迫による鮮度低下のため、全く水揚げ高(金額)が伸びなかった。 市場での価値が下がり、売れなかったのである。
また、クラゲ除去作業によって漁業関係者の労働時間が極端に増加していった。 さらに、クラゲが網を破ったり、船のクレーンを破損させるケースもあった。 漁場によっては労働の割に生産高が上がらないため、網を早期に切り揚げ、漁夫を解雇し解散してしまう所もあった。
漁業関係者からすれば、それはまさに悪魔の所業であった。
大型クラゲから定置網漁業を守るために、さまざまな対策を立案していった。
ホクモウのもとには、各地の定置網魚業者の悲鳴が集まってきた。 ホクモウはこうした声に応えるべく、さまざまな対策を立案していった。
しかし、漁業関係者は案の段階ではその効果を疑うのみで、誰一人として試みることはなかった。 大型クラゲは害にはなるが利にはならず、利を生まない対策網に投資はできないという考えが根強かったのかもしれない。
それでも、ホクモウは社内研修会を通じて、営業・開発スタッフが大型クラゲの知見を共有するとともに、全員の創意を抽出して、新たな対策案の取りまとめを続けた。
そのような状況下で唯一、金沢市内の定置網漁業者、(株)重福水産の川島良一氏が魚捕り袋の上に仕切網をかぶせるだけの簡易的な対策を試み、大型クラゲと魚群を分離できることを確認したのである

沖作業を行う越坂。シーズン中は海上での作業が仕事の中心となっている。

越坂が製作したペーパークラフト模型。
越坂と坂井の対策案が本格的に動き始めた。
その結果を受けて、奮い立った男がいた。ホクモウマリナーズの一員、越坂和彦(当時門前事業所船頭)である。 平成16年1月、越坂は自ら製作した金庫網式対策のペーパークラフト模型を持って本社を訪れ、自らの案を提案した。
越坂の案は、クラゲが来たら魚捕り部を外し、仕切網を取りつけてその先に既存の金庫網を設置するもので、新調するのは廊下網だけであり、コスト面でも優れていた。
この案は即刻了承された。 設計課による具体的な設計が始まり、次年度からの実用試験が行われることになったのである。
また、越坂の案と並行して、別の案も動き始めていた。 ホクモウマリナーズの一員で、開発部に所属する坂井明のクラゲバイパス網による対策案であった。 坂井は建て込みのスペシャリストで、豊富な経験に裏打ちされたその技術は誰にも真似ができないと評されていた。 坂井はクラゲを自然に排出し、魚群だけを箱網内に入網させる方法を考案。富山県の宮崎漁場の協力を得て実験を行い、その効果を確認していたのである。

浮子無し廊下網の取り付け図。仕切り網と金庫網の間に取り付けることで操業時間の短縮につなげる。

破砕された大型クラゲを排出するための筒網。

筒網の状況。

排出された廊下天井の網の大型クラゲ。
日本水産学会の漁業懇話会
講演時の配布資料



(独)水産総合研究センターHPで公開されています。

バイパス網を操業部位に装着。

ホクモウは門前事業所などで漁業関係者を集めた会議を開催し、クラゲ対策に関するさまざまな情報を提供している。
成果が出るまで決して諦めない。それがホクモウのスタンス。
こうしたホクモウの動きに、追い風が吹いた。 ホクモウの大型クラゲ対策案が、水産庁の平成16年度水産業構造改革加速技術開発事業に採用されたのである。
ホクモウは石川県のとぎ漁業協同組合を試験漁場として実験を繰り返し、対策網の改良を重ねていった。 また、国の補助事業として行ったこともあり、実験結果をリアルタイムで全国に発信することが可能となった。
越坂は言う。
「我々ホクモウのスタンスは、定置網漁業者が困っていることに果敢に立ち向かい、成果が出るまで決して諦めないこと。 私は門前事業所の試験漁場で同じ苦しみを味わっており、そうした痛みを共有しているからこそ、使命感に燃えるのです。 今回は国の補助事業でもあり、漁業者への普及活動がスムーズに行えただけでなく、人のつながりの幅を広く、太くすることもできました」

現在、ホクモウの対策網はクラゲの来遊経路に沿って西は山口県から日本海を北上して津軽海峡を渡り、岩手県に及ぶ各県に普及。 着実な成果を上げている。
成果が出るまで決して諦めない──こうしたホクモウのスタンスが、“海の悪魔”から各地の定置網漁場を守ったのである。
ホクモウは定置網漁業に関するさまざまなサポートを行っています。 「最近漁獲が減ってきた」「人をうまく動かせない」「後継者が心配だ」ほか、相談事、お悩み事がございましたら、お気軽に弊社営業までご連絡ください。