片田定置の水揚げ金額の推移。ホクモウの支援プロジェクトがスタートして以来、順調に推移している。

片田定置では春はブリ、夏はサバ、秋から冬にはワラサやカンパチが水揚げの中心になっている。

現在の乗組員は20歳代の若手から70歳代のベテランまで、幅広い年齢層で構成されている。

出漁前には西村が中心となってミーティングを行い、その日の海の状態を確認するとともに、漁の安全を申し合わせている。
ホクモウ漁業事業部
開発部 漁撈課  西村 聖
入社以来約30年にわたって海と向き合う。その真摯な仕事ぶりは海の男たちから絶大な信頼を寄せられている。

三重県志摩市
片田定置網
太平洋に面した港町・片田。
沖合4キロの地点に設置された定置網がこの地に海の幸をもたらす。

太平洋に面した三重県志摩市志摩片田町。目前に広がる大海原は、古くからこの地に海の幸をもたらせてきた。
しかし、平成10年から12年にかけて不漁が続き、資金繰りの悪化、設備投資の停滞による資材の老朽化が進み、操業率と現場士気が低下していった。片田の漁業は漁場荒廃への負のスパイラルに陥っていたのである。そうした状況を打開するには、抜本的な改革が求められていた……。
平成13年に入り、片田の海の男たちは意を決してホクモウを訪れた。ホクモウは以前から片田定置に対して熱心な再建提案を行っており、ホクモウの漁業支援に対する姿勢に感銘と共感を覚えた片田の海の男たちは、ホクモウに漁場の再生を託したのである。それはまさに、漁業の町の未来を託すことでもあった。

こうして平成13年9月、片田漁場の特別再建プロジェクトがスタートした。と同時に一人の男が片田にやって来た。ホクモウ開発部の西村聖である。西村は船頭として、特別再建プロジェクトの推進役を担うことになったのである。
ホクモウは漁場支援を行う際、スタッフを現地に常駐させて漁場管理・指導にあたる。現地の漁業関係者と苦楽をともにし、大漁を実現させる。こうした共存共栄の思想が、ホクモウの事業の根幹を形成しているのである。
西村は当時をこう振り返る。
「それまで私は門前の試験漁場にいましたから、太平洋の漁場は初めてでした。正直言って、最初は不安でいっぱいでした」
片田漁場は全国的にも類を見ないほど潮の流れが速く、波も高い。片田漁場の再生は、西村にとっても大きな挑戦であった。西村は太平洋を見つめ、自らに課せられた責任の大きさを改めて実感するのだった。

西村がまず着手したのは、定置網の設計を見直すことだった。
「それまで片田では、ブリやワラサの水揚げに力を入れていました。それを網型を変えることで、アジやスルメなども獲れるようにしたんです。その結果、漁獲高が安定するようになりました」
また、30人だった乗組員を13人に減らすとともに、19トン船による操業・管理体制に移行。固定費の削減に努めた。こうした省人化・省力化の推進と並行し、網の保守点検はホクモウが管理委託を行うことになった。
西村はホクモウ開発部、工場と連携し、水中ロボットによる網の通常点検、GPSを利用した側施設の形状点検、さらには網のメンテナンスなど、きめ細かな漁場運営を進めていった。先に記したように片田漁場は潮が速く、網の管理作業が滞ることは、水揚げに直接関わってくる。それをホクモウが管理することで、乗組員は魚を獲ることに集中できるようになったのである。
また、網や新造船など大きな設備投資に当たっては、ホクモウが提案する水揚げ金から支払いを行う長期決済システムを採用。漁期末の水揚げ金から漁場の必要経費を差し引いた金額を投資額の支払いに充当させることで、資金面の不安を軽減した。
だが、ホクモウがこうした体制や設備面だけを改善しても漁場の再生は実現しない。船頭を務める西村が現地の漁業関係者と苦楽をともにし、大漁に向けて心を一つにしていくことが不可欠なのである。
西村は次のように振り返る。
「私の役目は、魚を獲れるようにすること。そのためには、地元の人たちの協力が欠かせません。地元の人たちに信頼されるよう、一生懸命仕事に取り組みました」
その結果、片田漁場の水揚げは平成15年、16年度ともに3億8000万円に達した。大漁であった。片田の港に活気が戻ってきた──。

プロジェクトがスタートして6年。自然が相手だけに決して順風満帆とはいかないのが現状だ。実際、平成18年度は海水温の低下に見舞われ、水揚げは1億7000万円にとどまった。
しかし、不漁時でも経費分は確保できる体制が整っており、西村の表情に暗さはない。漁業関係者の士気も高まってきている。西村は言う。
「今ではみんなの性格もわかり、仲良くやっています。また、本社が私の仕事をしっかりサポートしてくれるので、一人で悩む必要はありません。現場と本社がしっかり連携して仕事を進めるのは、ホクモウの特長だと思います」
実は西村の任期は6年であり、平成19年8月末で片田を離れる予定だった。しかし、片田定置の強い要望で、西村の任期は延長される方向で調整が進んでいる。それは、西村がいかに地元に溶け込み、船頭として大きな信頼を得ているかの証にほかならない。片田での5年間で、西村はもうこの地になくてはならない存在になっていたのである。
こんな私でも必要とされるのは、本当に嬉しいことです──西村はそう言って、潮焼けした顔をほころばせる。
「ようやく先が見えてきた段階。地元の人たちと意見交換しながら、どうしたら魚がもっと獲れるかを考えていきたいですね」
片田定置とホクモウの漁場再生への取り組み──それはまさに一心同体、運命共同体としての挑戦であり、これからも続いていくのである。
朝5時、西村の指揮の下、片田の港から3隻の船が沖合の定置網に向けて出港する。春先はブリ、夏にはサバが水揚げの中心になる。今年はこれまで順調な水揚げが続いており、港には明るい空気が漂う。
「やっぱり大漁の時が一番嬉しいですし、操業できない時は頭が痛くなりますよ。片田は年中気候が温暖で、人もおおらかですね。いいところですよ。片田に来てよかったと思っています」
西村の声が弾んだ──。
ホクモウは定置網漁業に関するさまざまなサポートを行っています。「最近漁獲が減ってきた」「人をうまく動かせない」「後継者が心配だ」ほか、相談事、お悩み事がございましたら、お気軽に弊社営業までご連絡ください。